よくある誤解にこのようなものがあるようです。

①3Dプリンターは「簡単に」「すぐに」「何でも」作れる
②3Dプリンターは立体コピー機である

ボタンを押すだけで物が作られるイメージ。

そして、次のように考える人もいらっしゃるようでした。
③3Dプリントされた彫刻は3Dプリンターが作ったのであって、人が作った作品とは言えない
④3Dプリントはコピーが簡単だし、自分で作った物かどうか疑わしいから認めない。

私は「違うのにな~、、、」と思いました。
なんだか空しい気持ちになりました。

テレビでは3Dプリンターで銃を作ったニュースだったり、
芸能人のそっくりフィギュアが伝えられていますからそう考えるもの無理のないことかもしれません。

正確な情報を伝えればきっと分かってもらえるのではないかと思ってこれを書こうと思いました。
テレビで数回見て間違ったイメージを持たれている層に向けて、
なるべく正確な情報を書いていこうと思います。


最初に結論を書きます。
3Dプリンターは他の印刷機と同じ道具です。
印刷する為には3Dデータが必要です。
その3Dデータを作るには圧倒的な手作業が必要です。

小説家が本を書く場合と同じことです。
小説家がパソコンで文章を書く。
印刷所が本を印刷する。
印刷機が本を作ったのではなく(本の作者という意味です)、小説家が作者ですよね。

なので、3Dプリントも元の3Dデータを作った人が作者です。

3Dプリンターは単なる印刷機です。

でも例外があります。
3Dスキャナを使って形を作った場合は、3Dデータはスキャナによって自動で9割できますので、
スキャンのオペレーターやデータを修正した人を作者とは呼べないと思います。
あと、ネットに上がっている3Dデータを取得して印刷する場合は作者はデータを作った人です。

3Dデータが他者のイラストを立体化したものの場合は
小説原作の映画のような感じになるのではないかと個人的には思います。
原作者と映画監督のように。



パソコンの中での製作過程の動画をyoutubeに上げいています。
百聞は一見に如かずなので是非ご覧ください。





では、以下繰り返しになるかもしれませんが
細かく一つ一つ説明していきます。

3Dプリントは簡単でしょうか?
簡単とは何でしょう。
人の手を動かしていないから、機械が作っているから簡単と思うのかもしれません。
実際には、
作りたいものの3Dデータを3Dソフトで作成する必要があります。
データ作成には数時間~数日~数か月かかります。
ソフトと印刷機の設定が必要です。
3Dプリントされたものはサポートという重力を支えるための不要な物が付いているので(印刷方式によります)それを外します。
表面がザラザラ凸凹の物をつるつるにしたい場合は手作業で表面調整(数時間~数日)をする必要があります。
最初のうちは失敗の連続です。今でもですが。


すぐに作れません。
すぐってどれくらいでしょう?
1分?1時間?
実際は熱溶解方式の機械を使って積層0.2mmピッチで高さ6㎝直径2㎝くらいのものなら印刷に1時間。
直径30㎝高さ10㎝の植木鉢のような薄いものならざっくり24時間くらい。
お隣のお客さんで会社で大きめの3Dプリンターを導入した方がいました。
その3Dプリンターで高さ60㎝の物を作るのに1週間かかるそうです。
製作時間は形状や内部を空洞にするか埋めるか何%埋めるかによって変わります。

上記は印刷の工程についてのみですが、
その前段階の3D形状をパソコンの中で設計やら彫刻するのに時間がかかっています。
形を作ることをモデリングと呼びます。
モデリングはサイコロのような単純な形であれば1時間以内でできますが、
動物や人体は粘土の彫刻と同等程度の製作時間がかかります。
数日~1、2ヶ月程度。
求めるクオリティによります。
まあ、デジタルなので左右対称や等間隔に物を並べる作業は得意です。


何でも作れません。
3Dプリンターと使う材料(主にはプラスチック)の性能に依存します。
平面のプリンターがA4まで印刷可能とかそういうのと一緒です。



3Dプリンターは3Dコピー機ではありません。
3Dプリンターは印刷機なので出力しかできません。
コピーするためには3Dスキャナが別に必要です。
そっくりそのまま3Dスキャン可能なわけではありません。
スキャンできない素材があります。(鏡面、透明、黒色、細かいものなどスキャナの性能による)
スキャナーの光が届かない箇所はスキャンできません。
(医療に使われるCTスキャンのデータを使用することができる場合は内部まで可能です)
コピーの精度は3Dスキャナの精度と3Dプリンターの精度に依存します。
スキャンしたデータはそのままでは使えないので、
3Dプリントできるように修正しないといけません。
修正は人力です。



③3Dプリントされた彫刻は3Dプリンターが作った物なので、人が作った作品とは言えない
については他の分野と比較してみましょう。

2Dイラストは
人がパソコンで絵を描き
プリンターで出力します。
(ネットに公開する手段もあるでしょう。その場合はパソコン画面が出力機)
2D

3Dプリント(3D出力)は
人がパソコンで形を作り
3DプリンターやNC切削機で出力します。
3D

小説は
人がパソコンで物語を書き
紙や電子書籍で出力します。


紙に手書きじゃないから、キーボードを打っているから書いていないですよね?
でも物語を書いている。
「書く」とは文字を書くの意味ではなくて物語を作るという意味です。

作るとは何でしょう。
英語で作るに関係する語はいろいろあるようです。
make 製造する
create 創造する
produce 産み出す
plan 企画する

先の3Dプリント彫刻の例では
彫刻家がplan、produce、createして、
3Dプリンターはmakeの一部を担っているにすぎないのです。

パソコンと3Dプリンターは道具の一つです。
粘土とヘラ、木とノミ、いろいろな電動工具、それらと同列です。
作る人はどういうものを作りたいかによって道具を使い分けます。



④3Dプリントはコピーが簡単で自分で作った物かどうか疑わしいから認めない。
について
こう考える人はそもそもコピー機だという誤解があるようです。
絵画やデザイン等他の分野でも他の人のアイデアをパクって問題になることはありますよね。
パクリかどうかは作る人の倫理観の問題です。
どういう出力方法を使うかではありません。
コピー、パクリ、贋作等の可能性は他の分野と同じです。


お分かりいただけたでしょうか?
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